設計レビューや顧客への承認プロセスは、プラント設計におけるボトルネックの一つです。遠方の顧客を招き、紙図面や模型(昔はありましたw)を前に何時間もかけて打ち合わせを行う非効率な現状は、DXで変えるべきです。
この課題を解決するのが、MR(複合現実)を活用した「没入型レビュー」です。本記事では、AutoCAD Plant3Dの3DモデルをMRで活用し、承認プロセスを劇的に高速化するための具体的な手法を解説します。
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導入:レビューの課題は「空間認識のギャップ」
2D図面やPC画面の3Dモデルでは、スケール感、アクセス性、作業性といった空間的な要素を正確に把握するのが困難です。MRは、この空間認識のギャップを埋め、「あたかも現場にいるかのような」レビューを可能にします。
MR(複合現実)レビューの圧倒的なメリット
MRは、設計レビューの質とスピードを根底から変えます。
- 等身大での検証:MRヘッドセット(Meta Quest3など)を装着することで、設計したプラントを実物大(1:1スケール)で歩き回れます。配管の下をくぐれるか、バルブの操作空間は十分かなどをリアルに体感できます。
- 安全性の体感:設計段階で高所作業の危険性や動線の問題を体感し、安全設計(セーフティ・イン・デザイン)を促進します。
MRレビューのためのPlant3Dモデル準備
Plant3DモデルをMRで活用するためのワークフローです。
- データ軽量化:Plant3DからNavisworksを経由し、MRソフトウェアが読み込めるようにモデルを極限まで軽量化します。おすすめのMRソフトウェアは「Mixpace」です。
- 属性情報の維持:MR空間で配管や機器をクリックした際、Plant3Dで入力したタグ、材質、スペックなどの属性情報が表示されるように設定します。「Mixpace」であれば自動的に属性情報も表示できるデータ移行ができます。
MR(複合現実)の現場活用術
MRは、施工現場や既存プラントでのレビューに特に威力を発揮します。
- 実景への重ね合わせ:タブレットやMRグラス越しに、カメラが映す現実の景色に設計した3Dモデルを透明に重ね合わせて表示します。
- 改修設計の最終確認:既存プラントの改修設計において、新設配管のモデルを現場の実景に重ね、干渉がないか、取り付け位置は正しいかを現場で最終確認します。
- 施工手順の可視化:MRで仮設足場や重機の配置、部材の搬入経路をシミュレーションし、施工時の問題を事前に洗い出します。
承認プロセス高速化の鍵
没入型レビューは、以下の理由で承認を高速化します。
- 理解度の最大化:顧客が「完成したプラント」を明確に理解し、「こんなはずではなかった」という手戻りの原因を初期段階で解消します。
- 意思決定の即時性:その場で疑問点を3D空間で検証できるため、持ち帰り検討が減り、レビュー会議で承認に至る可能性が高まります。
まとめ:MRは「時間を消すレビュー」
MRは、設計者と顧客の間の空間認識のギャップをゼロにし、時間の制約を消し去ります。Plant3Dで生み出した高品質なモデルをMRで共有し、レビュー品質の向上と承認プロセスの劇的な高速化を実現しましょう。
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