【第70回】データセキュリティ入門:設計情報を守るためのクラウドとアクセス権限管理

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AutoCAD Plant3Dのプロジェクトデータは、企業の最も重要な機密情報です。設計ノウハウ、顧客情報、そしてプラントの物理的な安全に関わるデータが含まれています。クラウドやリモートワークの普及に伴い、これらの設計データを安全に管理するためのデータセキュリティ対策は、もはやIT部門任せではなく、設計部門の責任として不可欠となっています

本記事では、Plant3Dプロジェクトをクラウドで安全に管理するための基本原則と、設計者が実施すべきアクセス権限管理の具体的な手法を解説します。

導入:セキュリティは「データ駆動型設計」の前提条件

設計データが情報資産となるほど、そのセキュリティリスクは高まります。セキュリティ対策は、「面倒な作業」ではなく、「データ駆動型設計の信頼性を保証する前提条件」として捉えましょう。

クラウドベースのデータ管理における基本原則

Plant3Dプロジェクトをクラウド(ここではAutodesk社のAutodesk Construction Cloud)で管理する際に守るべき原則です。

  1. 最小権限の原則: ユーザーは職務遂行に必要最小限のアクセス権限のみを持つべきであるという原則。(セキュリティリスクを最小限にとどめるため)
  2. 単一アクセスポイント: 設計データへのアクセスは、CDE(Autodesk Construction Cloud)といった中央の管理システムを介してのみ行うようにします
    ※メールに添付してのデータやり取りなどは、もっとも愚かな行為です。
  3. エンドポイントの保護: データにアクセスするPCやモバイルデバイス(エンドポイント)に対するウイルス対策、パスワード管理を徹底します。

Plant3Dプロジェクトにおけるアクセス権限設定

Plant3Dのプロジェクトフォルダ構造に基づいた、具体的な権限設定の例です。

役割アクセス権限備考
プロジェクトマネージャフルコントロール全てのファイル/設定の編集権限を持つ。
配管設計者配管関係フォルダのみ「編集」機器や構造物のフォルダは「読み取り専用」とし、変更を禁止する。
設計レビューア(顧客、協力会社)Navisworksファイル(NWD)のみ「閲覧」設計データ(DWG)本体へのアクセスは禁止。
資材/発注部門BOM、レポートフォルダのみ「閲覧/ダウンロード」CADファイルにはアクセスさせず、必要な情報のみを渡す。
システム管理者設定ファイル(Specなど)の編集、プロジェクト管理技術標準を守るため、Specファイルの編集を制限する。

ACCによるセキュリティ機能の活用

専用の管理システムは、汎用クラウドよりも強固なセキュリティを提供します。

  1. 排他制御(チェックイン/チェックアウト): 誰もが勝手にファイルを編集できないように、編集したい人がファイルをロックし、編集後は履歴付きでシステムに戻す仕組みを導入します。
  2. 電子署名による責任の明確化: 承認された図面やレポートに対し、電子署名を付与。これにより、だれがいつ承認したかを履歴として残します
  3. ダウンロード制限: データダウンロードできる人・会社を制限する設定を導入します。

設計者が日常的にできるセキュリティ対策

システムだけでなく、設計者自身の意識と行動が重要です。

  • パスワードの強化: 二段階認証や、複雑で定期的に変更されるパスワードの使用を徹底します。
  • データのローカル保存の禁止: 業務に必要なデータは必ずクラウド上のACCに保存し、個人のPC上に残さないというルールを徹底します。
  • 機密情報の取り扱い: BOMや仕様書など、外部に渡すデータは、必要な情報のみに絞り、PDFなどで共有します。

まとめ:セキュリティ対策は「信頼」の源泉

設計データのセキュリティ対策は、「企業の信頼」を守るための基盤です。Plant3Dの導入を機に、設計プロセス全体を安全なクラウド環境に移行し、データセキュリティの意識を組織全体で高めましょう

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