【第５４回】配管設計の未来！生成AIはアイソメ図作成やルート計画をどう変えるのか？

AI、特に「生成AI（Generative AI）」の進化は、プラント設計の現場にも大きな波を起こし始めています。配管設計における単純な作図作業や、熟練の経験が必要だったルート計画は、生成AIによってどのように変革されるのでしょうか？

本記事では、AutoCAD Plant3D環境下で、生成AIが配管設計者の「強力なアシスタント」となる未来を予測し、設計者が今から備えるべきことを解説します。

導入：AIは設計者の「脅威」ではなく「武器」

生成AIは、設計者の仕事を奪うものではありません。むしろ、煩雑な繰り返し作業や最適解の探索といったタスクをAIが肩代わりすることで、設計者は「より高度な技術的判断」や「創造的な問題解決」に集中できるようになります。

生成AIが変革するルート計画

配管設計の難しさは、多くの制約条件（機器位置、構造物、メンテナンス通路、傾斜、スペックなど）の中で、最適なルートを見つけることにあります。

1. プロンプト駆動型設計：設計者が「ポンプAから熱交換器Bまで、スペックC、流体D、メンテナンス通路を避けるルートを生成せよ」と自然言語で指示（プロンプト）を出すだけで、AIが数秒で最適な3Dルートを複数提案します。
2. 制約条件の自動遵守：AIはPlant3Dのスペックデータを読み込み、熱膨張、サポート間隔などの技術的な制約を自動で遵守したルートを生成します。
3. 最適解の高速探索：人間の設計者では思いつかないような、配管材料や設置コストが最も低いルートをAIが瞬時に計算し、提案します。

アイソメ図作成の「手動修正ゼロ」化

Plant3Dでもアイソメ図は自動生成されますが、注釈の重なりや寸法線の見づらさなど、微調整が必要な場合があります。

1. レイアウトの自動最適化：生成AIが、出力されたアイソメ図のレイアウトを分析し、注釈や寸法線の重なりを自動で解消し、人間の視認性を考慮した最終調整を自動で実行します。
2. 図面ルールの自動適用：「この顧客はBOMの並びをメーカー順にする」といった顧客ごとの独自の図面ルールをAIが学習し、Plant3Dの出力に適用します。
3. 図面作成時間の最小化：設計者は一切図面ファイルを開くことなく、AIが生成・調整したファイルをそのまま納品できるようになります。

設計者に求められる新たなスキルセット

AI時代に設計者が生き残るために必要なのは、「AIを使いこなす能力」です。

1. プロンプトエンジニアリング：AIに「何を、どうやって設計させるか」を正確に指示するための技術的な指示書（プロンプト）を作成するスキル。
2. 技術的妥当性の判断：AIが提案したルートが、現場の施工性や保全性といった非構造的な要素も含めて本当に妥当かを判断する監査役としての役割。
3. データ品質の管理：AIが学習し、参照するスペック、カタログ、過去の設計データの品質を高く保つためのデータマネジメント能力。

Plant3DへのAI統合予測

将来的には、Plant3D自体にAI機能が深く統合されるでしょう。

• Design Assistant：設計中に「この場所のサポートは？」と聞くと、AIが最適なサポート形式と位置を提案する機能。
• Code Compliance Check：設計が完了した瞬間、JIS規格やASME規格などの膨大なルールに対し、AIが抜け漏れなくチェックを実行する機能。

まとめ：AIは「設計者の能力拡張ツール」

いかがでしたでしょうか。ここに書いたことはまだ実現はされていません。しかし、私の想像ではあと数年で段階的に実用レベルのものが出てくると思っています。そんな未来に向けて、私たち配管設計者は、以下のように働き方を変えていく必要があるのではないでしょうか？

生成AIは、配管設計における効率のボトルネックを解消し、設計者がより高度な設計課題に取り組む時間を作り出します。AIを恐れるのではなく、積極的に活用し、自身の設計能力を拡張する武器として使いこなす準備を始めましょう。