【第56回】【DX入門】設計部門が取り組むべき「データ駆動型設計」とは?

DX

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が叫ばれる中、設計部門は何をすべきでしょうか?それは、「図面を描くこと」から「データを作り、活用すること」への思考転換です。この新しいアプローチこそが「データ駆動型設計(Data-Driven Design)」です。

AutoCAD Plant3Dのインテリジェントな機能は、このデータ駆動型設計を実現するための最適なプラットフォームです。本記事では、設計部門のDXを成功させるための基本概念と具体的な取り組みを解説します。

導入:設計における「図面」と「データ」の違い

  • 図面中心の設計:最終成果物。情報は線や文字に埋もれており、再利用や集計が困難
  • データ駆動型設計中間生成物としてのデータが主役属性情報として定義され、検索、集計、シミュレーションなどに容易に活用が可能

データ駆動型設計とは、設計プロセス全体を「情報の流れ」として捉え、データ活用を最優先に考えることです。

データ駆動型設計の基本概念

Plant3Dのインテリジェンス機能は、まさにデータ駆動型設計の中核です。

  1. 形状(ジオメトリ)と情報の分離:配管や機器の3D形状と、それに紐づく属性情報(タグ、材質、スペックなど)をデータベースで別々に管理します。
  2. 情報の標準化:すべてのプロジェクト、すべての設計者が、統一されたルール(スペック、命名規則)に基づいて情報を入力することを徹底します。
  3. 情報の可視化3Dモデルは、情報の入れ物であり、情報の可視化ツールであると捉えます。

設計部門が取り組むべき「データの標準化」

データ駆動型設計を成功させる鍵は、「データの品質」です。

  1. タグ付けルールの統一P&IDで定義するライン番号機器タグの命名規則を全社で統一。これがデータの検索キーとなります。
  2. スペックとカタログの整備:使用する部品、材質、規格をSpec Editorで定義し、全社共通の最新スペックとして管理します。
  3. カスタム属性の定義:コスト情報や保全情報など、企業固有の管理に必要な属性をPlant3Dのデータ構造に追加します。

データ活用の具体的な事例

データ駆動型設計に移行することで、設計者は以下のような新しい価値を生み出せます。

  • リアルタイムコスト管理:設計中の3DモデルからBOM単価データを自動で連携し、設計変更がコストに与える影響をリアルタイムで把握。
  • 過去データからの最適解導出:過去の設計データ(スペック、BOM)を分析し、類似プロジェクトの最適な設計パターンを抽出。
  • シミュレーションの高度化流体解析(CFD)や構造解析に必要な材質、圧力、温度といった入力データを、3Dモデルから自動で抽出・提供

設計者のマインドセット変革

データ駆動型設計は、技術だけでなく、設計者の意識改革が不可欠です。

  • 「私はモデラーではない、データエンジニアである」:単に配管を描くのではなく、「将来活用される情報」を正確に入力する役割を自覚します。
  • 下流工程への意識:自分が入力したデータが、発注、施工、保全といった下流工程でどのように活用されるかを意識し、そのニーズに合ったデータ品質を目指します

まとめ:データ駆動型設計は「設計の未来を戦略的に決める力」

データ駆動型設計は、設計部門を「コストセンター」から「戦略的な意思決定センター」へと変革させます。Plant3Dを最大限に活用し、設計データを企業の最も価値ある資産として育て上げましょう。

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