既存プラントの改修やリプレース設計は、新規設計よりもはるかに困難です。図面がない、寸法が不明、アクセスが困難な箇所での現地調査は、常に計測ミスのリスクと隣り合わせです。その結果、設計後の現場で配管が合わないという致命的な手戻りが多発します。
この課題を解決し、改修設計のプロセスを劇的に効率化するのが、レーザースキャナによる点群データと、AutoCAD Plant3Dの連携です。本記事では、この最強の組み合わせによるワークフローを解説します。
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導入:点群データは「現場のデジタルコピー」
点群データとは、レーザースキャナで計測した数百万〜数億点の3次元座標情報を持つ点の集合体です。これにより、複雑な既存プラントを高精度でデジタルコピー(As-Builtモデル)として手に入れることができます。
点群データ活用のメリット
点群データを活用することで、以下のメリットが得られます。
- 現地調査の回数削減:一度スキャンすれば、必要なすべての寸法がデータに含まれるため、現場に行く回数を最小限に抑えられます。
- 圧倒的な精度向上:手作業での計測誤差がなくなり、新設配管と既存構造物との干渉リスクを最小限に抑えられます。
- 安全性の向上:高所や危険なエリアでの計測作業が不要になり、作業員の安全が確保されます。
Plant3Dと点群データの連携ワークフロー
点群データをPlant3Dで設計に活用する手順です。
- 点群の前処理(ReCap):スキャナで取得した生データ(RCS/RCP)をAutodesk ReCapなどのソフトウェアで統合・整理(レジストレーション)し、Plant3Dが読み込める形式に変換します。
※実際には、さらに前処理としてInfipointsなどの別ソフトがあった方が効率が良くなります。 - Plant3Dへの取り込み:処理済みの点群データをPlant3DのDWGファイルに外部参照(XREF)として読み込みます。この際、WCS(ワールド座標系)を正確に合わせておくことが重要です。
- 新規配管のモデリング:点群データで示された既存の機器や構造物を背景として利用し、その隙間やノズル位置に合わせて新設配管をモデリングします。
改修設計の効率化テクニック
点群データ上でのモデリングには、いくつかの特殊なテクニックがあります。
- 干渉チェック:点群データ自体は「点」の集まりですが、新設配管をモデリングする際に、既存の点群領域とのクリアランスを常に意識することで、設計段階での干渉を防ぎます。
- 「As-Builtモデル」の再構築:古い図面しかない場合、点群データを目視でなぞるようにPlant3Dで既存配管をモデリングし直すことで、正確なAs-Builtモデルを作成します。
※ただし、とてつもないマンパワーがかかります。 - 3Dモデルと点群の比較:既存の3Dモデル(古いモデルなど)と現在の点群データを比較することで、図面にはない現場での変更箇所を特定しやすくなります。
現場へのフィードバック
点群データは、設計だけでなく施工の現場でも活用されます。
- AR/VRによる位置確認:タブレットやARグラスで点群データと新設モデルを現場で重ね合わせ、配管の切断位置や支持架台の設置位置を正確に指示します。
- 写真との連携:点群データに現場の写真を紐付け、視覚的に確認しながら作業を進めます。
まとめ:点群データは「改修設計の確実性」を高める
点群データとPlant3Dの連携は、改修設計における最大の不安要素(計測ミス)を最小限に抑えます。「現場に行く前に設計を確定させる」というフロントローディングを実現し、設計の確実性と施工のスピードを飛躍的に向上させましょう。
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