AI(人工知能)や機械学習が、プラント設計の未来を変えることは確実です。しかし、「どこから手を付ければ良いか分からない」「大規模な投資が必要そう」と感じている設計部門リーダーは多いでしょう。
配管設計部門が最小の投資と最大の効果でAI/機械学習の恩恵を受けるための、段階的な活用ロードマップを解説します。Plant3Dが持つ豊富なデジタルデータは、AI学習のための最適なデータとなります。
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導入:AIは「データ活用」の延長線上にある
配管設計におけるAI活用は、「設計データを整理し、活用する」というDXの取り組みの延長線上にあります。まず、Plant3Dで高品質なデータを生み出すことが、AI導入の第一歩となります。
ステップ1(基礎):データの品質向上と前処理
AI導入前に、Plant3Dプロジェクトのデータ基盤を整備します。
- データクリーニング: 過去のPlant3Dプロジェクトデータに対し、タグの不整合、属性情報の欠落などをデータマネージャで修正し、AIが学習できる高品質なデータとして準備します。
- データの分類・標準化: 配管ラインをサービスコード(例:High Pressure Steam, Cooling Water)で正確に分類し、AIがパターン認識しやすいようにデータを標準化します。
ステップ2(初期):単純な反復作業の自動化
AIが最も得意とする、ルールベースの反復作業から導入を始めます。
- 自動で各種リストの生成:機器リスト、計器リスト、弁類集計リストなどを手作業ではなく、自動的にリストが生成される仕組みを作ります。
- BOMの自動監査: AIが過去の発注履歴を学習し、BOM出力時や設計完了時に「このスペックで使用するボールバルブは、過去のプロジェクトでは、このメーカーの品番が使われたいた」といった規格外れの可能性を自動で警告します。
- 図面ルールのチェック: アイソメ図の注釈や材料表などが、仕様要件を満たしているかをAIがチェックし、間違っていそうな個所を提示します。
ステップ3(応用):最適解の探索と提案
AIが設計者の高度な判断をサポートする段階です。
- 配管ルートの最適化提案:
- 問題: 複雑な構造物や多数のノズルがある空間での最適な配管ルート決定は、熟練の経験が必要です。
- AI活用: Plant3Dモデルと構造物の制約をAIが学習し、配管コスト、圧力損失、サポートの容易性といった複数の指標に基づき、最適な3Dルートの候補を自動で提案します。
- サポート位置の最適提案: 配管のスペック、スパン、荷重といった情報をAIが学習し、応力解析の結果に基づいた最適なサポートタイプと設置間隔を提案します。
ステップ4(未来):ジェネレーティブデザイン(生成AI)
最終的に目指す、AIが設計そのものを生成する未来です。
- 指示によるモデル生成: 「ポンプP1からT1タンクへ、高圧蒸気ラインを設計せよ」といった自然言語の指示(プロンプト)に基づき、AIがP&IDから3Dモデル、BOMまでを一貫して自動で生成します。
まとめ:AI導入は「小さな成功体験」の積み重ねから
配管設計部門のAI活用は、まずPlant3Dの高品質なデータを基盤とし、「データ監査」や「BOMチェック」といった小さな成功体験を積み重ねることから始まります。AIを「設計者の能力を拡張するツール」として捉え、段階的なロードマップに沿って取り組みましょう。

ねこ道
ステップ3以降は、もう少し先の未来で実現できるようになるものです。
まずはステップ1を確実に行い、ステップ2の簡単な自動化を目指していきましょう!
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