今回は、AutoCAD Plant3D(以下Plant3D)を導入する目的について考えてみましょう。まず最初に、大事なことがあります。それは、設計者と経営者では少し目線が違うということです。
経営者の考えていること
経営者目線では、ずばり人件費(設計マンパワー)の削減です。Plant3Dにより、2D-CADより効率よく設計をすることで固定費である人件費を減らしたいのです。なので、ベテランの設計者と新人設計者(ほぼCADオペレーター業務になっている)のペアで仕事をしていては、費用対効果は薄くなってしまいます。これは、プラントエンジニアリング業界の人材が過渡期のため起きている問題です。ベテランはCADが使えず、新人は設計ができないので、二人で一人分の働きになってしまっている状態です。

これからの若い人は、ぜひとも3D-CADで設計ができるようになってください。
設計者がCADオペレーターも兼務する世界が健全な状態だと思っています。
設計者の考えていること
設計者目線では、目的が3つあると思っています。それぞれ解説していきます。
- フロントローディング
- データの一元化(3Dプラットフォーム化)やデジタルデータ連携
- 配管設計業務の効率化
1.フロントローディングとは、仕様の確定をできるだけ序盤で行うことで、後半の仕様変更を減らす働き方のことを言います。(後半に起きる仕様変更の方が手間とお金がかかるため、それを前倒しで行うことで納期とコストのリスクを最小限に抑えることができます)
これが一番大きな目的(つまり費用対効果が一番大きい)なのですが、実際には3(配管設計業務の効率化)に目が向いていることが多いです。何故かというと、フロントローディングとはエンジニアリング業務全体に関わる話なので、配管設計だけで完結できない内容だからだと思います。この業界は、配管設計を専門に行う会社が多数存在し、プラントエンジニアリング会社はそういった会社へ業務委託(もしくは設計者を派遣してもらう)をしているため、エンジニアリング業務全体でのコントロールが難しいためです。

中小企業のプラントエンジニアリング会社は、ここに活路があるニャ!!
全てを社内で完結することでフロントローディングを実現させるニャ!
そのためのツールがPlant3Dなんだニャ!
2.データの一元化はイメージしやすいかと思います。3D-CADにすべてのデータを集約する感じです。プラントエンジニアリング業務は、昔から大量の紙図面(最近はPDF)で仕事をしています。その中で、必要な情報を探さなければいけません。しかも、その情報は1つの資料で完結するものではなく、A図面で概要を調べて、B図面に詳細が記載されていて、C仕様書に特記事項があって。。。といった感じで、いくつもの図面や資料を跨いで情報が連なっています。効率悪いですよね?(笑)
その問題を解決するには、一つの大きな器(ここではPlant3D)にすべての情報を入れてしまうことです。あるいは、Plant3Dにすべての情報を紐付け(データ連携)すればよいのです。この辺りは、また別記事でお話ししようと思っていますが、土木・建築業界ではオートデスク社のACC(Autodesk Construction Cloud)などが使われています。プラントエンジニアリング業界では、まだ活用が少ないようです。
3.配管設計業務の効率化は、よくある3D-CADを使用するメリットの話で、一番シンプルなやつです。実は、第1回ですでにお話ししました(笑)
- ビジュアル的に見やすい、分かりやすい。
- 三次元による干渉確認が可能。
- 材量集計が可能。
- スプール図の自動出力が可能。

これらは分かりやすい業務効率化ですが、Plant3Dの本質ではないことを理解しておいていただけるとよいかと思います。(業務効率化を否定しているわけではありません。それ自体は素晴らしいことです。)
まとめ
- Plant3D導入目的は、経営者と設計者ではちょっと目線が違う。
- 経営者は、人件費の削減を目的としている。(CADオペレーターの削減や業務効率化など)
- 設計者は、「フロントローディング」、「データの一元化(あるいはデジタルデータ連携)」、「配管設計業務の効率化」の3つを目的としている。
いかがでしたでしょうか?Plant3Dの本質はフロントローディングにあるという思考を、プラントエンジニアリング業務に携わるたくさんの方々に持っていただくことで、この業界の未来が明るくなることを信じています。
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